ウェルナ-症候群(WS)は遺伝的早期老化症候群(早老症)の代表的疾患であり、種々の老化関連症状を若年期より発現する常染色体劣性遺伝病である。白髪、白内障、低身長、強皮症様の皮膚変化、耐糖能異常、性腺機能低下などの徴候・症状を、20-30歳台より呈する。平均寿命は50歳前後であり、死因は併発する悪性腫瘍と動脈硬化性疾患である。多くの臨床的、細胞生物学的研究にもかかわらずWSの本態は捕らえきれなかったが、1996年にWSの原因遺伝子(WRN)単離同定された。WRN蛋白はヘリケース蛋白の一つと考えられた。 WRN単離後、WS患者におけるWRNの遺伝子変異、15種類を同定した。その解析からは、15種類すべての変異間においてWSの症状・徴候には相違がなく、C末に存在するWRNの核移行シグナルの欠落に由来する機能喪失に起因すると考えられた。また、WRN産物のコドン1367番目のArg-Cysのアミノ酸多型を用いたケースコントロールスタディを、インスリン非依存性糖尿病、晩期発症型アルツハイマー病、後縦靱帯骨化症、90歳以上の長寿老人などで行った。結果は、WRNの多型は一般の心筋梗塞との関連を示し、WSの病態解明がヒトの自然老人や各種生活習慣病の発症機構解明や予防、治療にまでつながら可能性を示唆した。さらに、WRN産物と相互作用をする蛋白質などを探索するため、two-hybrid systemをはじめとする各種技術はすでに確立させ、抗体んどの必要資材も一部入手して研究を開始した。実際にWRN-Hと相互作用をする可能性のある蛋白候補をすでに5種類検出し、さらにその蛋白質を同定しようとしている。
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