研究概要 |
昨年度,インターロイキン1(IL-1)により誘導されたマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPS)が関節破壊の中心的役割を担うこと,さらにMMPS産生の一部が,3',5'-cyclic AMP(cAMP)により抑制されることを確認した。これらの事実から,本年度はin vitroにおいてcAMPホスホジエステラーゼ抑制作用を示すことが知られているフラボノイドに着目し,その新規関節破壊防止薬としての可能性を検討した。 日本白色種ウサギ膝関節由来の軟骨細胞および滑膜細胞の培養系において,沖縄産柑橘シークワーシャーより単離精製したフラボノイド・ノビレチン(nobiletin)は,MMP-9/ゼラチナーゼB産生を濃度依存的(8-32μM)にそのmRNA発現の減少を伴って抑制し,さらにMMP-1/コラゲナーゼおよびMMP-3/ストロムライシン産生をも抑制することを確認した。また,nobiletinのこれらの作用は,細胞毒性に起因したものでもないことも確認した。一方,nobiletinはMMPs産生を抑制した濃度において細胞内cAMPを増加させることはなく,nobiletinのMMPs産生抑制作用とcAMPホスホジエステラーゼ抑制作用とは相関しないことも判明した。 さらに,nobiletinは関節症病巣における炎症メディエーターであるプロスタグランジンE2産生をMMPs産生を抑制する濃度よりもはるかに低濃度(<8μM)においても抑制すると共に,ウサギ関節滑膜細胞の増殖抑制作用のあることも確認され,慢性関節リウマチにおけるパンヌス形成抑制作用も期待できることが判明した。また,植物クマリン誘導体であるエスクレチンにも関節軟骨細胞において同様の作用があることを確認した。 以上,nobileteinおよびエスクレチンは,抗炎症性の関節破壊防止薬として有望な候補となりうることが判明した。
|