研究概要 |
慢性関節リウマチや変形性関節症の発症頻度と加齢との関連については検討を加えた.平成9年度は,生後3週,6カ月および1.5年のウサギ関節軟骨より調製した軟骨細胞培養系を使用し生化学的検討を行った.その結果,個々の細胞において加齢に起因した増殖遅延と肥大化が判明した.また,加齢による細胞のプロテオグリカン生合成能の低下が観察された.さらに,加齢の進んだ組織由来の軟骨細胞ほどに,プロテオグリカン遊離が大きいこと,この遊離が炎症性サイトカインであるIL-1αの添加によりさらに促進されることが判明した.このIL-1αに対する反応性も加齢の進んだ組織由来の細胞において高く,IL-1がマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)産生を促進することにより,プロテオグリカン遊離が起こることが明らかとなった.さらにMMPs産生の一部が,cAMPにより抑制されることを確認した.これらの事実からMMPsの活性化および産生の抑制薬は,従来プロスタグランジン産生抑制に重点がおかれた抗炎症薬比較してより有用な新規関節破壊防止薬であると考えられた.そこで平成10年度は,proMMPs活性化抑制の視点からヒト尿中トリプシンインヒビター,MMPs産生抑制作用の観点からクマリン誘導体であるジヒドロキシクマリンおよび柑橘由来フラボノイドであるノビレチンの有効性を検討し,それぞれが当初の作用点に著効を示す有用な化合物であることが判明した.特にノビレチンはMMPs産生抑制作用に加えてプロスタグランジン産生抑制作用をも備えておりその有効性が期待される. 以上,本研究では慢性関節リウマチや変形性関節症の発症と加齢との関係を解明し,それに基づいた新規効炎症薬候補の提唱を行ない得たことで,当初の目的はほぼ達成されたと考えられる.今後は,これら候補薬のより一層の展開が期待される.
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