研究概要 |
本研究は過酸化脂質の消去に与る酵素の遺伝子を細胞や動物個体に導入し、その活性を高めることにより、細胞あるいは動物の老化を制御することを目的としている。研究代表者らは過酸化脂質の消去に与る酵素としてリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)に注目し、平成9年度には以下の点を明らかにした。 1.PHGPxを発現していないモルモット由来細胞に過酸化脂質を添加するとその濃度依存的にミトコンドリア膜電位(Ψ_m,蛍光プローブJC-1で観察)は早期に著しく低下するが、ヒトPHGPx遺伝子を導入し、高発現している細胞では過酸化脂質によるΨmの低下は抑制された。すなわち、PHGPx遺伝子を導入することにより、過酸化脂質の細胞障害作用を抑制し、ミトコンドリアの機能を保持できることが明らかとなった(印刷中)。 2.ヒトPHGPxのcDNAを組み込んだpRetro-Off Vectorを用い、ラット胸部大動脈由来平滑筋細胞にPHGPx遺伝子を導入し、それを高発現しているクローン数種類を得た。現在、PHGPxの発現と平滑筋細胞の増殖、機能との関連において検討している。 3.リポ-ソーム法により、動物固体に効率よく外来遺伝子を導入、発現させる方法を確立するため、ルシフェラーゼ遺伝子を用いて基礎的検討を行った。その結果、従来使用してきた正電荷リポソームをさらに修飾することにより、マウスの肝臓や肺臓でのルシフェラーゼの発現を高めることが可能となった。現在、その中で有用なリポソームを用いてPHGPx遺伝子を老化促進モデルマウスに導入し、その活性を高めることにより過酸化脂質による組織障害を予防するための研究を進行している。
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