Soluble Aβ(sAβ)とaggregated Aβ(aAβ)の神経毒性はそれぞれ別の物質によって、神経毒性が緩和されるため、sAβとaAβではニューロン死をおこす分子過程が異なることが示唆される。そこで、どのような分子機構を経てsAβやaAβがニューロン死を引き起こすのかを明らかにするために、以下の研究計画を実施した。sAβまたはaAβによるニューロン死のcommitment pointを調べたところ、どちらも3時間であったため、Aβ添加3時間後に培養ニューロンよりmRNAを調製し、72種類のprimer pairを使ったdifferential display法で、発現誘導される遺伝子断片を解析した。その結果、aAβ添加により培養ニューロンに出現するbandが6個、sAβ添加により出現するbandが9個、どちらによっても出現するbandが14個得られた。また、aAβ添加によりニューロンから消失するbandが7個、sAβ添加により消失するbandが4個あった。band中のcDNAをプローブとしたnorthern blotによって発現の誘導や抑制の確認を試みたが、1個のband中には複数のcDNAが含まれていたため、発現の誘導や抑制を確認することが難しかった。そこで、40個のbandをsubclone化し、reverse primed probeによって、特異的に発現しているcloneをこれまでに6種類拾い、このうち、i81B-11、i132-1、F182C-2、i132-3についてはnorthern blotによって発現変化が確認できた。i132-3は12SrRNAでsAβ添加により発現が減少した。i81B-11、i132-1、F182C-2は、aAβとsAβのどちらによっても発現誘導されるcloneで、いずれも、9kb以上のmRNAを認識していた。
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