マウスX染色体連鎖免疫不全(XID)はB細胞の分化異常に起因すると考えられている広範なB細胞不全を示す。XIDマウスはブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine kinase:Btk)のpleckstrin homology(PH)領域に一つのアミノ酸変異(Arg28→Cys)を有する。 本研究課題では、B細胞の初期発生と機能細胞への分化におけるBtkの役割の解明を目的とした解析を行い次の点を明らかにした、(1)XIDで変異を含むPHドメインを介したBtk会合分子の同定を試み、IL-5刺激によりBtk活性が亢進する早期B細胞株Y16由来のcDNAライブラリーから547アミノ酸から構成されると考えられる分子のcDNAを単離した。予想されるアミノ酸配列はプロリン残基、セリン残基に富み、3箇所のチロシンキナーゼによるリン酸化モチーフを含んでいた。この分子の細胞株への導入実験によりBtkとの会合が確認された。(2)B細胞表面機能分子であるCD38刺激による細胞内シグナル伝達系およびBtkの活性化を解析した結果、CD38を介したBtkの活性化に対してはLynがその上流に位置していると考えられた。(3)Btkトランスジェニックマウスの脾臓ではNKT細胞が減少していた。またこのマウスでは1次刺激によるIL-4産生が減少していたことからBtkの過剰発現がNKT細胞の分化および機能に抑制的に働いている可能性が示された。
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