本研究では、B細胞の初期発生と機能細胞への分化におけるBtkの役割およびBtkの活性制御機構の解明を目的とした検索を行い以下の成果が得られた。 (1) Btk遺伝子導入マウスの解析:野生型及びXID型Btk遺伝子導入トランスジェニックマウス(Tg)のB細胞の解析を行い、野生型Btk導入XIDマウスではLy-1陽性B細胞の存在IL-5プラス抗CD38抗体の共刺激に対する応答性などの点で免疫不全の部分的な回復が認められた。XID型Btk-TgではLy-1陽性B細胞の減少、抗RP105抗体、抗CD38抗体、抗IgM抗体刺激に対する増殖応答の低下が確認できた。Btk-TgではIL-4産生の減少、脾臓でのNKT細胞が減少が見られBtkの過剰発現がNKT細胞の分化に抑制的に働いている可能性が示された。 (2) BtkのPH領域に会合する分子の同定:Btkの発現、活性の制御系を明らかにする目的で、BtkのPH領域に会合する分子の同定を行った。早期B細胞株Y16由来のcDNAライブラリーより547アミノ酸から構成される分子BAM11のcDNAを単離した。BAM11はヒトleukemia細胞株で転座が報告されているLTG19/ENLと高い相同性を持っていた。部分欠失蛋白を用いた解析からBAM11の214-256番目のアミノ酸がBtkとの会合に重要であること、240-368番目のアミノ酸の過剰発現株でIL-5依存性増殖の約30%の抑制されることがわかった。 (3) 細胞表面機能分子、CD38を介したBtk活性化機構の解析:Fyn、Lyn遺伝子欠損マウスを用いてBtk活性化きこうを解析した。その結果、CD38を介したB細胞活性化にはFyn、Lynの両方が関与する伝達系が存在し、相乗的に働いていることが示唆された。また、Btkの活性化に対してはLynがその上流に位置していると考えられた。
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