研究概要 |
B細胞は骨髄中で造血幹細胞から分化し抗原レセプター陽性の未熟B細胞となる。未熟B細胞は血中に移行した後脾臓、リンパ節で抗原感作を受け、成熟し、再度骨髄に戻ってきて形質細胞として抗体を産生する。このようなB細胞の運命には骨髄の微細環境が重要な働きをしているが、その分子レベルの解析は未だ十分になされていない。我々は骨髄微細環境と相互作用する分子として、新規カドヘリン、OBカドヘリン及びプレB細胞レセプターの同定、機能について解析している。 OBカドヘリンは、我々が骨芽細胞株からクローニングしたII型カドヘリンに属する新規カドヘリン分子であり、ストローマ細胞株にも発現している。カドヘリンは同種間細胞接着性を有する分子であり、様々な細胞種で発現していることが知られているが、リンパ球細胞では幼弱なT細胞にE-カドヘリンが発現している以外に報告はない。そこで我々は、骨髄中でストローマを介したB細胞のホ-ミングにOBカドヘリンが機能しているのではないかと予想し、B細胞におけるヒトOBカドヘリンの発現を調べた。その結果、このカドヘリンがIgM,IgD,CD19陽性のヒト成熟B細胞表面上に発現していることを見出した。 B細胞分化の過程でプロB細胞からプレB細胞にかけて、H鎖再構成、対立遺伝子排除、L鎖再構成がおこる。このステージで特異的に発現しているのがVpreBとλ5から構成されているSL鎖(代替L鎖)で、λ5ノックアウトマウスでは骨髄中のB細胞の大部分がこのステージで分化が停滞していることから、SL鎖が免疫グロブリン遺伝子の再構成に機能していると考えられる。そこで、我々はλ5ノックアウトマウス骨髄由来のプレB細胞株を確立し、それらの細胞にλ5を導入することによりSL鎖の再構築を行った結果、H鎖、κ鎖が再構成しλ5の再発現がB細胞分化を誘導した。
|