国際金融における証券化(セキュリタイゼーション)取引の仕組みにおいては、債権譲渡が有効に行われることが必要である。実体法の分野では、証券化取引の実務の要請を受けて、対抗要件制度の簡易化を中心に、取引を容易にするための法改正が行われた。しかし、国際的な債権譲渡では、複数の国の法律のうちのどれが適用されるかによって、債権譲渡の有効性が変わってくる。ところが、現行の日本の国際私法規則である法例12条は、債権譲渡の対第三者に対する有効性を債務者の住所地法で判断している。これでは、債務者が外国に居住する場合は、証券化のための日本の新しい法律を利用することができない。そこで、まず、将来的、集団的に譲渡された債権群からの収益をもとにした証券発行取引の方法を分析し、さらに債権譲渡特例法などの新しい証券化関連法を分析することによって、国際私法上の法律関係の重心は、債権者の営業所にあることを明らかにした。そして、現行の国際私法規則である法例12条のもとでの新しい解釈として、債権譲渡の登記地法を準拠法とすべきこと提案した。しかし、この解釈では、どこに登記すべきかという問題や二重登記の問題に対応できない難点がある。そこで、証券化取引に一層適合した法律は、債権者の営業所地法であること、そしてこの考え方を取り入れた新しい国際私法規則を設けるべきであることを提案した。さらにこの方向は、国際私法の基本である最密接関連法の考え方にも合致することを明らかにした。この研究成果は、後掲の英語論文として公表している。
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