先ず、平成10年度の研究への準備段階として、本年度は、各国仲裁法関係文献(フランス仲裁協会機関誌の一九六九年以降現在までのバックナムバ-、フランス・ダローズ=シレ-判例集(CDロム)、イタリア民事訴訟法雑誌の一九二四年以降現在までのバックナムバ-、その他のイギリス、ドイツ、スイス、オランダ、スペインなどの各国の仲裁法、国際民事訴訟法教科書)の購入、公刊されている各国及び国際仲裁判断の収集に重点を置き、新規に購入したノート型パソコンを活用してこれ等を系統的に整理した。 次に、本研究の主眼であるフランスの『任意鑑定』ドイツ、スイスの『仲裁鑑定』イタリアの『自由な仲裁』などの異同を明確にするため、その一つの規準として、多くの場合に『当事者に対する拘束力』が挙げられている点に鑑み、既に購入・収集した資料に基き本研究の骨組を構築する作業として、既判力及び執行力をともに有する『国家の裁判所の判決』と執行力しか有しない『非訟事件の裁判』更に既判力しか有しない『仲裁判断』の三者が相互に如何に関連しているかを検討した。図式的に言えば、イタリアの学説が主張するように『仲裁判断』(既判力)に『非訟事件の裁判』(執行力)が結合すれば、『国家の裁判所の判決』(既判力プラス執行力)に均しくなる筈である。しかし、『非訟事件の裁判』が限りなく『判決』に接近しつつあるという最近の世界的な潮流から見て、その狭間に漂う『任意鑑定』や『仲裁鑑定』『自由な仲裁』が実際にはどのように位置付けられなければならないか、それを決定するのが次年度の課題となる。
|