研究概要 |
本研究は,様々な形状に見られる共通性(力学的傾向)に対し,構造力学的視点のみならず感性工学的視点からの定性的および定量的な分析を試み,それらの特性を指標化することにより,ものの形状決定を支援するシステムであるCAD/CAMシステムに,現行の機能では困難である感覚的および経験的指標による総合的適合形状の生成を可能とする機能を付与することを研究目的としている。本年度は,ビールジョッキの取っ手形状をケーススタディとして,直観的にデザインされた取っ手形状の30サンプルをアンケート調査より回収した。得られた形状サンプルに対し,実使用を想定した境界条件および荷重条件の下での構造解析を有限要素法に従って実施し,それぞれの等価応力分布と主応力分布を得た。また同時に,美的観点よりこれらのサンプルの順位付けを行い,「好ましい形状」と「好ましくない形状」のグループを得た。これらの構造解析より得られた主応力分布を,ある種画像パターンとしてとらえることによって,「好ましい形状」に見られる主応力分布には,画像パターン的コヒーレンシが観測されること,またこのコヒーレントな分布パターンが,想定されたビールジョッキに接続する取っ手付け根から取っ手そのものに展開していることが明らかとなった。また一方,「好ましくない形状」には上記のようなコヒーレンシが観測されにくく,わずかに観測されるコヒーレントパターンも付け根には接触していないことが明らかとなった。 また,上記の検討で得られた構造力学的傾向の正当性と一般性を検証するために,得られたサンプル形状に対するパラメトリックな変形を与え,再度感覚的評価を実施するためのシステムとして材料非線形性を利用した形状生成手法の検討を行った。
|