研究概要 |
人があるものを見たときに受ける印象は、そのものの形に大きく影響される。一方で、そのものの持つ力学的な特性は、その形と強く関係していると考えられる。換言すれば、ものの形から受けるイメージは、そのものの持つ力学的な特性の影響を強く受けていると推測できる。そこで本研究では、人は生まれ持った感覚や経験によって、ものの内部に働く見えない力(応力)の存在を無意識に感じ取っているのではないかと仮定し、ある形状に対して,そのイメージ構造および力学的特性を明らかにすること、そしてこれらの関係を明らかにすることを試みた。具体的には,(1):片持梁形状に対する官能評価実験,(2):有限要素法を用いた片持梁の構造解析,(3):(1)および(2)によって得られた「形から受けるイメージ」と「力学的特性」の関係の検討,の三つの実験および解析を行った。本研究では、片持梁の様々な形状を解析モデルとして用いた。形状イメージに対する官能評価実験の結果より、ものの形状に対する人の意識が、重力の存在に支配的に影響されていることを確認することができた。形状イメージとの関連において構造解析を行う際の条件設定として、自重つまり重力の存在を考慮に入れることの必要性が確認できた。最終的に、主応力の大きさや、主応力ベクトルの方向を数量データとして用いることにより、形から受けるイメージとの相関関係を考察した。結果として、形から受けるイメージと、その形の持つ力学的な特性の関係を検証し、その両者の間に数値の上で有効な相関関係を見出すことはできなかったが、本研究を通して、人は、力に耐えているものを見たとき、そのものの中に働く見えない力(応力)の存在を、無意識に感じているという仮説を得ることができた。
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