この研究は、身近に存在する工業的に生産されたとは言いがたい多くのさまざまな形の中に、あいまいであるとか再現性に乏しく一過性的であると一言で片付けてしまうにはあまりにも調和の取れた、言い換えるとのある種の力の流れ、形の流れ、つまり統一感を感じさせる形態が存在するという事実にその動機を得ている。現在、開発が継続され次第に一般的な設計ツールとして定着していく勢いを呈しているCAEの中の形状最適設計アプリケーションが、基本的には基本設計や詳細設計の領域中心に検討され、本来的にその設計の新たなる支援を必要としている概念設計のレベルでの使用を積極的に考慮した形状設計アプリケーションの開発はいまだ不充分の感がある。当然ながら、CADとしてFEMとは切り離されたレベルでの概念設計支援システムの構築と実用化はかなりの技術レベルにおいて実現されているが、CAEの中での概念設計は、大きな可能性を有しながらも、人が介在することによる避けることのできないあいまいさのために、数理的な研究対象とはなかなかなりにくいのが現状である。そこで、本研究では、いままで切り離されてきた力学的な検討と人の直観的な判断基準との関係を再考し、そこに存在する力学的関係を解明することで、CAEの概念設計として直接的に形状設計に適用できる設計概念の提案を、1)直感的な形状の採取・作成、2)直感的な形状の力学的特性の評価、3)同形状に対する視覚イメージの構造評価、4)本形状における力学的特性と視覚イメージとの関係の解明、5)視覚イメージに影響を与える力学的指標の定義の検討内容に従って試みた。このようなプロセスを経て、現在までに本研究で定義したStress Coherenceの存在が人の抱く力学的な直観性と、意識的にはそれとは関係ないとされる美的感覚との間に、ある種の関連性が存在していることを確認している。
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