研究概要 |
環境騒音の体験・教育システムの構築にあたり,本年度の研究目的は,1.「騒音による心理的影響の有無」の境界に対応する等価騒音レベル値は,どの程度の普遍性を持っているかを各種要因について調査研究すること,2.昨年度に引き続き,視覚と聴覚の相互作用や統合効果の観点から,提案している二点音源自動車騒音源モデルによる実感的に体験できるシミュレータと実際の現場の録画・録音・再生システムとの比較検討を行うこと,および3.「うるささ」・「色相」騒音計の有効性は,人間が騒音を抑制できる等価騒音レベル値の観点から,上記シミュレータを用いて実験的に検証することである。主要な結果は以下の通りである。 1. 「心理的影響がある」と判断した被験者数の累積百分率が10%に対応する等価騒音レベル値は40dBであり,50%は49dB,および90%は58dBであること,国内で構成された9種類の騒音評価尺度の比較検討結果から,騒音による心理的影響の有無の境界に対応する等価騒音レベル値は,49dB前後であること,この49dBは,"% highly annoyed"曲線のおおむね10%に対応すること等がわかった。 2. 視・聴覚特性に基づく基礎実験結果から,無響室において左右のチャンネル間にレベル差をつけることにより移動感を出すスピーカ受聴方式と60インチ液晶プロジェクタを組み合わせた二点音源モデル自動車騒音源シミュレータ,および特殊な部屋が必要でないスピーカ再生時と同じ伝達関数にして音を鼓膜に伝える新たに提案した耳栓型電気音響変換器を用いたイヤホン受聴方式とへッドマウントディスプレイを組み合わせた自動車騒音源シミュレータを設計・製作し,それらの有効性を実験的に検証している。 3. 各種騒音対策と心理量の対応関係,具体的には,等価損失は30dB以上で,「あまり気にならない」程度であり,かつ遮音の「効果がある」と判断されること,等価損失の周波数特性で見ると,総合判断が「良い」と判断されるためには,500Hz以上で40dB以上必要であること等を明らかにしている。
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