(1) 昨年度に引き続き、ビールに関する嗜好の定量化を試みた。市販品ビール48種類の成分濃度、および比重・濁度といった物理的な分析値と、熟練パネラーによる官能評価値との間のモデリングを行った。ファジィニューラルネットワーク(FNN)も含めて、推定精度が高いモデルは、入力変数が多く、構造やルールを理解しにくい。そこで、パラメータ増加法(PIM)による回帰分析モデルとPIMを用いたFNN、遺伝的アルゴリズム(GA)とSWEEP演算子法を併用した新手法FNNとでモデリングを行い、推定精度を比較した。その結果、新手法のFNNでは実用上充分な精度を保ったままモデルのルール数の削減が可能であることがわかった。 (2) 構築した食嗜好モデルを実際の製品製造に結びつけるには製品製造のプロセス変数を成分濃度などの製品品質で記述することが重要である。このため(1)と同様にして、ビールの仕込み工程、発酵工程、貯酒工程などの醸造工程と製品ビールの品質(成分濃度)との間のモデリングも行った。新手法のFNNで選択された入力変数やファジィルールは熟練工程管理者の知識と一致しており、得られたFNNモデルの妥当性と有用性が示唆された。 (3) 感性情報処理の手法を麹製造プロセスのモデリングにも応用した。NNとGAの組み合わせにより、麹の目的品質を達成するための品温軌道を算出できることが示された。(4) バイオミメティック味覚センサーの開発を行った。味覚レセプタータンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌を培養し、目的タンパク質を精製する手法を確立した。さらにこのタンパク質を表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)表面に固定する方法を検討し、SPR値の変化を確認した。センサー部分は直径3mmであり、充分に小さいバイオミメティックセンサーの開発が可能であることがわかった。
|