研究課題/領域番号 |
09838018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
上田 光夫 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (20243123)
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研究分担者 |
平松 幸三 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (70026293)
横川 公子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (50090923)
佐藤 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 講師 (20252546)
浦川 宏 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (10183211)
梶原 莞爾 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (10133133)
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キーワード | 感性 / 動的変化 / ダイナミックス / 服装 / 服飾 / 歴史 / 藍染め / インジゴ |
研究概要 |
感性の時間軸での動的変化、すなわち感性ダイナミックスを明確にし、工学に応用するための基礎研究として、テキスタイルおよびファッションを中心にとりあげ、中世から現代までの服飾の感性的変遷について考察した。平安時代に見られる男女の服装に注目して調査した結果、この時代から男装と女装の明確な区別ができ上がってくることを認めた。江戸時代になると、服飾は女性にとって最も大切な財産として認識されるようになり、女性がこの時代の社会で抑圧された環境下におかれている反面、その創造的意欲の目標の一つとして服飾というものが位置していたことが推定できた。そして、明治、大正に至り、純日本的な服飾の中に海外の素材が混入してきて、ドラスチックに服飾に対する感性認識が変動した。羊毛の持つ目新しいドレープ性が日本古来の服飾に適用されるようになり、著しい感性価値の変動があったことが認められた。さらに、現在の若者の服飾は、歴史的な感性の変遷を基礎として、さらに現代の多種多様なメディアによるバーチャル世界の影響を大きく受けたものであることも考察できた。材料そのものの時間的変化の考察としては、中世から現代までの数千年に渡って共通して使用されてきた藍染めをモデルとしてとりあげ、生活での使用履歴に伴う色彩の変化について科学的に追跡した。モデル藍染めには伝統的な「すくも藍」を使用した発酵建てによる染色品と、近代化学によってつくられたインジゴを用いた化学染色品を使用し、比較検討した。モデル藍染めは使用履歴に伴って感性的な変化をおこすことが明らかとなり、とくに伝統藍染め品と化学染色品との間に明確な色彩変化の差違が認められた。このことは、化学品が感性的には必ずしも伝統品と完全に代替できているわけではないことを示すもので、伝統品の秘めている感性的価値がまだ十分に科学されていないことが明らかとなった。
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