本研究では、サイバースペースにおけるテキスト(文字)情報や画像情報などによって伝達される情緒、感性、対人距離、社会的状況などにおける感覚的表現とその読解を「電子感性」と定義し、研究2年目の課題として、その利用の現状を、国内を中心とした電子ネットワーク活動(ハビタットII)と、海外を中心とした電子ネットワーク活動(ワールズ・アウェイ)を対象に、観察を行った。調査結果の分析は現在進行中であり、結果の報告は部分的ではあるが、ビジュアル通信部分において採用・利用されるアバタ(ユーザの代理身体)の非言語的表出(ヘッドや服装などの身体装飾、表情、身ぶり、スペーシング、接触など対アバタ行動)について、それぞれに特徴的なパターンや傾向が分析され、文化的背景の違いによるサイバースペースでの行動や表現型の存在が示唆された。一方で、国内で商用サービスされているのビジュアル通信システム“富士通ハビタットII"の利用者分析において認められた距離(スペーシング)や性表出の特徴的傾向に類似した結果もワールズ・アウェイにおける分析において得られつつある。したがって、サイバースペース(電子空間)にあっては、文化的境界を超越した感覚や行動の適応性や独自性が形成されつつある一方で、それらが、現実世界の感性となんらかの連続性を有するものである可能性が示唆された。
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