今年度は予想外の事態として、サイバー世界の再編成が起こっており、そのためバーチャルチャット「ハビタットII」の後継版「Jチャット」について調査・分析を行った。具体的にはJチャットにおける、アバタ間距離の測定、アバタボディの体型選択、アバタ ボディの性選択と性転換、アバタボディのカラーリング、アバタヘッドの形状選択、アバタヘッドのカラーリングなどについて利用状況を調査した。その結果、距離に関しては、対面方向(部位)によってアバタ間距離が異なることなどが判明し、アバタ間距離が人間行動学や社会心理学などで言うところの「パーソナルディスタンスの異方性」に似た現象を示すことがわかった。このことは、アバタ間距離がウインドウ内オブジェクトのレイアウト行為として行われているのではなく、対アバタ関係を意識した"スペーシング"として調節されている可能性を示唆するものである。この他、利用者によるアバタのヘッドとボディの種類(体型・形状)の選択状況について調査した結果、多様に分散するのではなく、いくつかの種類に集中して選択されていることが明らかとなった。アバタの皮膚部についてのカラーリング(塗装)についても同様の結果が得られた。これらの結果は、ビジュアルな仮想世界においては、利用者は、目立ったものや奇抜なものというよりは、むしろ、"フツウ(あるいは一般的)"な形状、 "淡い"色合い、"light"な感覚、などを好む傾向にあることを示しており、仮想世界が性や行動表象の点で中世化しつつある様相にあると考察された。
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