研究概要 |
人間とコンピュータのインタフェイス改善を目的として,適切な認知的負荷に関する側面と音声入出力が二重課題における認知情報処理能力の干渉をいかに緩和するかの側面から検討を加えた。本研究では,以下のような実績が得られた。(1).認知的負荷の増加に伴う視覚情報処理容量の変化を,視野の狭窄化,視線の動きの変化(停留時間,停留回数などの変化)に基づいて明らかにし,視覚情報処理容量の低下がエラーの増加といかに関連しているかを検討した。その結果,認知的負荷の増加にともなって,視覚情報処理容量が低下し,エラーが増加することが明らかになり,認知負荷が低すぎる場合にもエラーが多く発生することが指摘された。また,認知的負荷が適度な場合には,両極の場合に比べてエラーが少なくなることが示唆された。(2).(1)と同種の作業を被験者に長時間負荷して,瞳孔経,心電図,脳波などによって認知的負荷に伴うストレス,負担,疲労を評価することを試みた。その結果,脳波データのカオス解析結果,ならびに瞳孔経の変化に基づいてストレス,負担,疲労を評価可能であり,これらを応用して適度なストレスがかかるような認知的負荷をもった作業システムを設計できることが示唆された。(3).二重課題へ音声入力と音声出力を用いた場合の有効性を検討した結果,音声入力と音声出力は,作業者の認知的負荷を軽減させ,人間とコンピュータのインタフェイスを高めるための有効な手段であることが明らかになった。これらの3つの研究成果に基づいて,人間にとって適度な認知的負荷をもつインタフェイスについて考察を加え,人間側の負担を最適にし,エラーを少なくするような認知的負荷の条件を明らかにした。また,こういったインタフェイス設計のための認知工学的原則を提案した。
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