不快感に関する重要な原因の1つとして濡れ感・蒸れ感があると考えられるが、人間の皮膚における濡れ感・蒸れ感に関する感覚受容器の存在が不明である。このために、濡れ感・蒸れ感についての学術的定義すら明確ではない状態である。本研究では、濡れ感に対しては、発汗により皮膚上に拡大した水分が皮膚上で蒸発することにより、皮膚表面の温度低下が生じると同時に濡れた衣服と皮膚間での摩擦抵抗に起こる変化を皮膚上の温度受容器と機械刺激受容器が関知した感覚であると定義し、さらに、また蒸れ感に関しても脳の作用により皮膚上に抽出した汗は周囲環境の湿度が高いために、水分の蒸発速度が遅くなり、そのために皮膚温度の上昇が続いていく現象を温度受容器と機械刺激受容器が関知した感覚であると定義。以上の2つの作業仮説を基に、蒸れ感覚に関する実験結果と数値計算との対応から蒸れ感覚を解明することを目的としている。感覚には刺激の絶対量だけでなく刺激の時間的変動も重要であり、定常刺激と非定常刺激とが考慮できる。蒸れ感覚と布の乾燥挙動については検討する必要があり、本研究では身体周辺並びに衣服内熱気候での温度変化、湿度変化のシュミレーションを行っている。本年度は熱流体解析の数値計算ソフトにより微少空間領域での温度、気流分布の数値計算を行い、その適合性について検討を進めた。温度分布等のカラー表示による視覚的検討の有効性についても明らかにした。次年度では衣服内微間隙の状態について数値計算を行い、濡れた衣服を着用した場合の身体周辺部並びに衣服内微間隙の湿度について明らかにする。
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