従来の研究では、乗用車の特徴把握について、側面の輪郭線形状を点とそれを結ぶ線で表し、点の位置情報をもとに変形することで、その構造を探ってきた。しかし、点の位置情報だけでは、変形の際に形の骨格が崩れてしまうことがわかった。そこで、線の連続性を考慮するために、輪郭線形状をフーリエ変換を用いて周波数スペクトルへと分解し、これを操作することで形の骨格を崩すことなく変形を行う方法を考えた。本研究では、抽出された周波数スペクトルの一部を削除する方法を用いて各周波数にどれだけ形情報が含まれているか推定し、特徴把握との関係について検討を行った。 まず始めに正方形及び正方形を頂点で連結したものをサンプルに、ある周波数nHz(nは正の整数)以下の周波数スペクトルを削除し、元の形状からの変形の度合いをみることで、それらにどれだけの形情報が含まれていたかを推定した。この結果、周波数スペクトルを削除すると角が丸くなるが、その丸みの大きさと周波数スペクトルの対応関係が明らかになった。 この知見をもとに、乗用車の側面視についても同様の操作で輪郭線形状を変形し、もとの形状に対してどのような違いが表れるかを同定の容易さをもとに比較した。この結果から、1〜48Hzまでの周波数スペクトルに車体形状全体のプロポーションを表す形情報が含まれているが、これだけでは必ずしも同定に寄与しないことがわかった。また、49Hz以下にはコーナー部やその周辺の丸み、ボディ全体を形成する曲線の質(丸みの大きさやその変化)といった全体のデザインを支配する形状への味付けを整える形情報が含まれており、それらがあることで同定が促進することが分かった。 今後は周波数スペクトルを増加したときに起こる輪郭線形状の変化が特徴把握にどのような関係があるかについて、研究したい。
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