研究概要 |
人間の精神物理量と心負担との関係について検討を行った.人間の精神物理量として,自律神経と密接な関係を持つ,心拍変動に注目した.心拍変動とは,心電図におけるR波のピーク間隔が常に揺らいでいることに注目したもので,これを周波数解析することにより,交感と副交感神経の両方の影響を受ける0.1Hz付近に表れるピーク(MWSA),ならびに副交感神経の影響を受ける0.3Hz付近に表れるピーク(RSA)を得ることが出来る.そこで本年度はRSAの変動要因に注目した.まずこれらの値と心負担との関連を明確にするため,室内および自動車操縦時の呼吸変動とRSAの関係を明らかにするために実験を行った.実験ではメトロノ-ムを用いて呼吸統制を行い,呼吸周波数とRSAの周波数ならびに,振幅について解析を行った.その結果,心負担が同一であっても呼吸周波数の増加に伴い,RSAの振幅が減少し,今後の解析においては呼吸周波数のモニタリングが心負担解析には重要となることを確認した.また心負担の数量化のため,これら精神物理量の動特性解析,ならびに心負担を起こさせている主因の解析(因子解析)を行う第一段階として,心拍変動を表す動的モデルの構築を行った.このモデル化には,ニューラルネットワークを用い,運転時の各種環境情報のうち,感度の高い情報を選定し,解析に用いた.また動的モデルを構築するにあたり,テ-ラ展開の高次項を考慮する意味から,4拍前までの値を用いた.学習の結果,時間領域ならびに周波数領域において,実験結果とモデルを用いた解析結果は非常に良い一致をみることが出来た.これにより本年度の研究実施計画に記した内容を,ほぼ終了することが出来た.今後このモデルを解析することにより,人間の生体反応の動特性,ならびに心負担を起こさせている要因を解析出来る見通しができた.
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