研究概要 |
商品などの感性評価データは個人の好みを反映して大きな分散を持つ。個人の感じ方のあいまい性,不安定性を考えれば,この散らばりを統計的と見るよりもファジィ的であると解釈するのが自然である。本研究の目的は,感性表現間のファジィな距離を同定し,ソフトなグルーピングと代表的な感性表現を選定すること,さらには,感性表現とデザイン要素とのソフトな対応モデルを構築し,デザインから感性表現,逆に,感性表現からデザインを推論するための手法を開発することである。 本研究では,まず,平均データにより構成された因子空間に個人のデータを写像することにより,感性表現を因子空間内のファジィ対象として認識する方法を提案している。この手法は,素データの評定者変動量を保存するという特徴を持つ。つぎに,雲のような広がりを持つファジィ対象間の距離の与え方について検討し,そのような対象に適切なクラスタリング法を開発している。また,ファジィ回帰分析手法を発展させて,外的基準がファジィ数で与えられる場合の数量化理論I類手法を開発している。同定されるファジィ・カテゴリー評点の中心が平均データによる従来の数量化理論I類によるものと一致することが特徴である。最後に,ファジィ数量化理論I類モデルを利用して,感性表現からデザインを推論する手法を提案している。
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