綿、ポリエステル、改質ポリエステルムース布で作製した衣服の着用実験を行い、ニューラルネットワークを利用してこれらの衣服の着用快適性予測と、着用快適性に影響を与える因子の評価を試みた。衣服の着用実験は環境温度を33.0℃一定とし、環境湿度のみ40%→75%→40%と連続的に変化させて身体に刺激を負荷する方法で行った。用いたニューラルネットワークは3層構造で、出力層を着用快適性とし、入力変数として物理的因子のみ9つの場合と、さらに3つの主観的因子を加えて12因子とした場合の2通りで学習させた。 その結果、身体刺激に対する応答データのひとつとして、主観的因子をニューラルネットワークでの学習の入力因子に加えることによって、快適性の予測精度を約2倍向上できることを見い出した。また、比較として用いた二次多変量解析による着用快適性の推定では、入力因子数を12にすることによって、ニューラルネットワークでの予測と同等の結果を得ることができた。しかし、多変量解析では適切なモデルを構築する指針がないのに対し、ニューラルネットワークによる解析では自らモデルを構築する柔軟性をもっており、身体生理変化を伴うような正確なモデル化が困難な対象についても、精度の高い予測が可能であることがわかった。さらに、親水性繊維、疎水性繊維の差が、ニューラルネットワークを利用した快適性予測評価において、汎化能力の差や重み係数空間の差として見い出され、本手法により着用快適性への衣服素材の影響も評価可能であることがわかった。
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