研究概要 |
クロフジツボTetraclita属のうちT.japonica′(津軽海峡〜台湾),T.formsana′(伊豆〜台湾).T.squamosa′(房総〜インド洋),T.serrata(インド洋), T.rufotincta(紅海〜インド洋),T.rubescens′(北米西岸),T.confinis(カリフォルニア湾),T.stalactifera(フロリダ〜ブラジル),および近縁属Austrobalanus imperator(オーストラリア),Newmanella coerulescens(オーストラリア〜四国),N.radiata(フロリダ〜ブラジル), Tesseropora rosea(オーストラリア〜パラオ),Epopella plicata(オーストラリア)のミトコンドリアDNAの2つの遺伝子(CO1および16SrRNA)を解析してきた。を付けた5種はかつてT.squamosaの亜種として,また′を付けた2種はかつてT.stalactiferaの亜種とされていた。 ・CO1および16SrRNA遺伝子から求められた系統樹は異なっていたが,後者の系統が現在の地理的分布を説明する。 ・Tetraclitaに限れば,西太平洋・インド洋に分布する分類群(T.japonica,T.formosana′,T.squamosa′,T.serrata,T.rufotincta)は,一つのクレードに含まれ,また東太平洋・大西洋(カリブ海を含む)に分布する分類群(T.rubescens′,T.fonfinis,T.stalactifera)は別のクレードに含まれる。 ・この場合,かつてT.squamosaの亜種とされていたT.rubescens′が真にT.squamosaとの類縁関係が密接であるのか否かを再検討する必要がある。 ・かつてTetraclitaの一員であったMewmanella radiata(Newmanella属の模式種)がTetraclita属のクレードの中に含まれ,独立した属として認められるか否かは今後の研究として残される。 ・かつてTetraclita属(4枚の殻板からなる周殻をもつ)の一員であったAustrobalanus(6枚の殻板からなる周殻をもつ)はDarwin(1854)が指摘したようにTetraclitaと密接な類縁関係を持つ原始的な分類群となる可能性を得た。
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