1)小小割球の左右不均等配分に関する研究(1)生体原基と小小割球の左右性における相互関係--ウニ幼生では、5放射相称型の成体原基は、基本的に幼生体の左側に形成される。また、我々の従来の研究から、小小割球の子孫細胞は、左側体腔嚢に余分に配分されることがわかっている。成体原基の左側形成と、小小割球の左側過剰配分の間に、相互関係があるかを、小小割球および小小割球子孫細胞の切除実験から調べた。その結果、成体原基と小小割球の左右性は、必ずしも相関していないことがわかった。(2)小小割球左右不等配分様式の核支配--小小割球子孫細胞の左右体腔嚢への不等配分の様式は、ウニの種類によって、左右に5:3の比率で配分されるグループと、8:0の比率で配分されるグループとに分れることが、従来の我々の研究から明らかになっていた。これの5:3型の種と8:0型の種とを掛け合わせたところ、常に、8:0型が優性に現われ、小小割球の左右不等配分の様式は、8:0型を優性として、zygoticに決められていることが明らかになった。 2)左右非相称性の成立に対するリチウムの影響に関する研究--左右非相称性に対するリチウムの影響は、ウニの種によって感受性が異なり、バフンウニは、リチウム処理により成体原基形成方向に影響を受けるが、ハスノハカシパン発生影響を受けないことが明らかになった。小小割球の左右体腔嚢への不等配分は、バフンウニもハスノハカシパンも、ともに、リチウムの影響を受ける。この面からも、成体原基と小小割球の左右性は、必ずしも相関していないことがわかった。 3)有柄ウミユリ類トリノアシの HoxおよびHbox遺伝子--有柄ウミユリ類トリノアシのHox遺伝子の分離を試み、6個のHoxの分離に成功した。また、クラスターにのらないMrHbox1を分離し、その塩基配列の決定を行なった。この遺伝子は、ホメオボックス遺伝子として、類似のファミリーが見つかっていない、全く新しい遺伝子である。
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