1.ヒメトビウンカの細胞質不和合性 本州の7地点よりヒメトビウンカを採集してDNAを抽出し、Wolbachia感染率の空間・経時変動解析用のサンプルを準備した。これらのサンプルは、以前に集めたサンプル、平成10年度採集予定のサンプルとあわせて解析するためのものである。また、Wolbachia ftsZ遺伝子によるPCR診断によって多数個体を検した結果、ヒメトビウンカに感染しているWolbachiaはすべてB型系統であり、A型系統の感染は発見されなかった。 2.アワノメイガの性比異常 本州の3地点よりアワノメイガとアズキノメイガを多数採集し、雌バイアス性比異常系統を得た。一部の性比異常現象は、明確に母性遺伝した。また母性遺伝する性比異常のほとんどはWolbachia感染を伴っていることがPCR診断実験よりわかった。Wolbachia感染を伴う性比異常は、野外において非常に低い発生率を示した。交配実験・抗生物質処理実験の結果から、それらの性比異常の原因は、Wolbachia感染による遺伝的雄の雌への性転換であると考えられた。交配実験の結果、Wolbachia感染の垂直伝搬率が高いと推定された。一部の個体について、Wolbachia ftsZ遺伝子の塩基配列(約1kbp)を決定し、その系統学的位置を推定した。 また、Wolbachia感染を伴わず、異なる表現型を示す性比異常系統がアズキノメイガより1つ発見され、アワノメイガ属の雌バイアス性比異常には複数の原因が存在することがわかった。
|