研究概要 |
1.伊豆半島および伊豆諸島の沿岸およそ35地点からミオドコ-パ類を採集した。あわせて10種以上が同定され,そのうち半数以上が未記載種である(本年度に購入したビデオカメラのために観察の効率と精度が飛躍的に向上した)。 2.神津島では卵/胚に色多型を発見した。ミオドコ-パ類の卵/胚は通常は褐色であるが,それ以外に鮮やかな赤,緑,黄色等々の色を呈する個体がかなりの頻度で採集された。この色多型を示す個体は,卵/胚の色の他には通常の個体と異なる形質が何ら認められなかった。 3.生物地理学的観点から興味深いのは,大島を境に南北でミオドコ-パ群集の組成が異なることである(たとえば発光種は大島以南には採集されなかった)。 4.ところで今回見つかった色多型ときわめて類似した現象が北海道の魚類(ハタハタ)でも発見されている(北海道新聞の報道)。ともにこれまでには報告例のないものであり,2例間に関連があるのかどうかが注目される(分類群はきわめて遠いが,同じ海洋環境に生息するという意味では関連を即座に否定することはできないと考えている)。この現象がエル・ニ-ニョ現象あるいはまた環境ホルモンによる汚染等と結びつくかどうかはまだ分からないが,そうした可能性も視野に入れつつ,次年度以降は種と地域をしぼって,伊豆半島形成の地史学的背景の上にミオドコ-パ類の種分化の過程を理解するべく研究調査を続けていくつもりである。
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