研究概要 |
1.フィールド調査:新たな樹種の実生を得るため,昨年度に引き続いて果実・種子の採集を行い播種したが,今年度も成熟した果実や種子は少なかった。さらに昨年度も全体的に果実をつけた樹種が少なかったため今年度発芽した実生も極めて少なく,野外での実生の生態観察・採取などフィールド調査の成果はそれほどあがらなかったのは残念である。 2.昨年度から解析をすすめていたグミ科,シナノキ科,ウコギ科;キク科,スイカズラ科については投稿論文として取りまとめた。いずれも地上子葉,開出子葉型(ただしグミ科の一部には地下子葉性のものがある)でグミ科では子葉がやや多肉の貯蔵型である。実生の段階でもそれぞれの科に特徴的な毛の形質に大きな多様性がみられた。 3.画像データの作成:これまでに蓄積した実生標本類の画像データ化を継続して行い,特に亜熱帯性の樹種で特殊な実生形態をとるミフクラギ(キョウチクトウ科),ハスノハギリ(ハスノハギリ科),テリハボク(フクギ科),メヒルギ(ヒルギ科),サガリバナ(サガリバナ科),サキシマスオウノキ(アオギリ科)などについて解剖図を作成した。さらにスキャナを利用して実生標本の画像情報化を一部の資料について行った。 4.日本産樹木の実生形態のとりまとめ:今年度は最終年度に当たるため,これまでに集まった日本産樹木の実生資料全体について記載文や解剖図,画像データなどを科ごとにとりまとめた。成果はまとまった著作として出版する計画である。
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