研究概要 |
カラスアゲハ亜属(Achillides)各種の系統関係をミトコンドリアDNAのND5遺伝子によって解析した。カラスアゲハ(P.bianor)は大きく4つの系統に分けられる。それらは台湾・中国大陸南部産(ssp.bianor,thrasymedes)、八重山諸島産(ssp.okinawensis)、奄美・沖縄産(ssp.amamiensis,ryukyuensis)、韓国・日本列島産(ssp.dehaanii,tokaraensis,hachijonis)であり、これら4系統の塩基配列の違いは、種差に匹敵するほど大きい。八重山諸島と奄美・沖縄のカラスアゲハは琉球列島が大陸から分離した時に隔離されたと考えられる。カラスアゲハ中国亜種(ssp.bianor)は数塩基の多型があるが、韓国・対馬・日本本土・サハリン産(ssp.dehaanii)、トカラ列島産(ssp.tokaraensis)、八丈島産(ssp.hachijonis)のカラスアゲハは塩基配列が全く同じである。トカラ海峡以北の日本列島のカラスアゲハは最近(氷河時代)朝鮮半島から侵入して急速に分布を広げたと推測できる。 クジャクアゲハ(P.polyctor)はカラスアゲハとは別種とされるが、塩基配列に違いがなく、それらは同種であることを強く示唆する。シナカラスアゲハ(P.syfanius)はミヤマカラスアゲハと別種とされるが、塩基配列に違いがなく、それらは同種であることを強く示唆する。 ウスバシロチョウ属(Parnassius)2種の各地産の系統関係を同様に解析した。ヒメウスバシロチョウの北海道・サハリン産と大陸産とは塩基配列が大きく異なる。ウスバシロチョウの日本産と中国産とは大きく異なる。日本産の両種は日本列島成立時に隔離されたと考えられる。
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