研究概要 |
キイロショウジョウバエは生物学の基礎研究に不可欠なモデル生物として広範な分野で使用されている.ショウジョウバエの遺伝学はキイロショウジョウバエ単一種から導かれているにもかかわらず,その成果は広く理解され,一般化されている.キイロショウジョウバエに最も近縁な種はオナジショウジョウバエである.種間雑種の雄は致死となり雌は不妊である.このオナジショウジョウバエから発見された性比歪み遺伝子,雑種致死救済遺伝子,などはキイロショウジョウバエでは発見されていない突然変異である.オナジショウジョウバエだけに観察される特有の生物現象の解析を進めるために,下記の3点について研究を行った. 1.性比異常突然変異体の電子顕微鏡観察による解析.pslとexf遺伝子の精子形成過程,特に核の分離と凝縮に焦点を絞った.exfでは,核内に膜様器官の凝集が観察されたが,詳細はこれからの研究により解明をめざす. 2.雑種致死救済遺伝子の一つLhrはオナジショウジョウバエ特有の遺伝子である.この遺伝子の分子生物学的研究に向けて,Lhr遺伝子座を唾腺染色体地図上54E-Fと決定した.この遺伝子を単離する基盤が確立した. 3.遺伝学研究の最も基礎となる染色体異常である逆位の作製を試みた.染色体の操作に不可欠である逆位染色体の維持と系統管理技術の確立のために,雄では生存し妊性があるが,雌で不妊となる遺伝子の探索を行っている.
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