研究概要 |
東アジアに分布するカヤツリグサ科やイネ科草本を加害するヨコバイ亜科ヨシヨコバイ族(Deltocephalinae,Paralimnini)の種と属について生物地理的区分と多様性の関係について研究を行った. 初年度は,その基礎研究としてヨシヨコバイ族の分類および系統関係の解析を行った.微小な形態情報を観察するために双眼実体顕微鏡を備品として購入し,九州大学農学部昆虫学教室に保存されている標本を基に研究を行った.また,一部の標本に関しては走査型電子顕微鏡によって超微細構造の比較観察も行った. その研究成果の一部として,8属のヨシヨコバイ族と,その近縁族2族10属,外群10族28属について,前胸背側縁に位置する隆起線の形態について研究を行った.その結果,この隆起線の有無や発達状態によって,従来ヨコバイ族Deltocephaliniに分類されているFutasujinus,Hengchunia,Takagiella,Ynocephalusの4属がヨシヨコバイ族と共通の形質状態を保有していることが判明し,これらをヨシヨコバイ族に移動させることを提示した.このことによって,ヨシヨコバイ族は東アジアを中心に分布し,前胸背側方隆起線が退化するという方向に多様化した一群であることが示唆された. 上記の研究結果から,高次分類体系の再編成の必要性が認識されたので,次年度以降は高次分類体系の再構築を行い,最終的に得られた分類体系を元に生物地理と多様性の関係を考察する.
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