研究概要 |
ジンチョウゲ科のシュート構成の多様性を具体的に明らかにし、シュート構成がどのように進化してきたかを示すことを目的として形態観察と分子系統分析を行った。日本産ジンチョウゲ科全5属およびDais,Gnidia,Daphnopsis,Aquilariaを含む20種から全DNAを抽出した後、葉緑体DNA上のmatK遺伝子を対象にPCRで増幅し、オートシークエンサーにより塩基配列を決定しこれに基づいて系統樹を作成した。外群にはフタバガキ科のNeobalanocarpusを用いた。matK遺伝子の全長について塩基配列決定を決定し、最節約法および近隣結合法で解析した結果信頼度のきわめて高い系統樹が得られた。従来の分類でジンコウ亜科とされるAquilariaが最も基部につき、次いでジンチョウゲ亜科のうち南半球のGnidia,Daphnopsisが分岐した。その内側はジンチョウゲ連でまとまり、ミツマタが最初に分岐し、その内側は大きく2つのクラスターに分かれた。クラスターの一方には中国産のSterellaとガンピ属、アオガンピ属および従来Daphneに含められていたフジモドキがまとまったが、属のまとまりおよび属間関係ははっきりしなかった。もう一方にはフジモドキを除くDaphneがまとまり、調べた範囲では2群に分かれる傾向があった。以上の結果は従来の系統分類を変更する必要があることを示唆している。形態観察は主に東京大学理学部附属植物園、摂南大学薬学部植物園に栽培されるジンチョウゲ科の生植物などを材料としてシュート構成の調査を継続して行い、ミツマタの3分枝が中軸とその2本の側枝であることなどの新知見を得た。ジンチョウゲ科の花序の多くは短い中軸に花が集まってつき、その直下の葉腋から仮軸分枝するが、ガンピ属では花序が不整に分枝し、仮軸分枝を生じる位置も不定である。系統樹と比較すると、ジンチョウゲ連の中では、前者から後者が進化した可能性があると考えられる。
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