研究課題/領域番号 |
09839027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
青塚 正志 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (40106604)
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研究分担者 |
田村 浩一郎 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00254144)
鈴木 惟司 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (40128575)
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キーワード | サワガニ / アイソザイム / 交雑域 / 地理的分化 |
研究概要 |
神奈川県とその近郊では、体色の異なるサワガニ集団(DA:黒褐色型とBL:青色型)が狭い混生域を境に即所的に分布している。遺伝的に異なる集団の混生域では、様々な進化上の出来事が生じてきたと考えられ、重要な研究対象である。本研究では、神奈川県の一つの河川である日向川に沿ったおよそ3kmの幅の16地点と、東北から九州に至る全分布域を網羅した合計144地点について体色変異、アイソザイム変異分析を行った。その結果、次のような知見を得た。日向川では神奈川の他の河川と同様に、上流にDA、下流にBLが分布しており、両者の混生域は1kmの幅のごく狭い地域に限定されていた。アイソザイム分析結果の詳細な検討から体色個体間に交雑が生じていることが確認された。体色個体間の生殖的隔離機構の発達を検討した結果、雑種の生存力の低下などの顕著な交配後隔離機構の発達は認められなかったが、交雑域で任意交配が成立していないことを示唆する結果も得られ、なお詳細な検討が必要と思われた。神奈川県以外でBL型は四国、九州の限定された地域にも非BL型と分布を違えて生息しているが、アイソザイム分析の結果から、それらの地域のBL型と非BL型との間には顕著な遺伝的分化が生じていないことが判明した。本州では、分析したアイソザイム遺伝子座は神奈川県を中心にした体色変異集団の交雑域においてのみ著しく多型的であり、他の広い地域では同一の対立遺伝子にほぼ固定しているという極めて特徴的な様相を呈していた。本研究で調査したアイゾザイム変異分析結果と、繰り返された氷期による気候、植物相の変動などの資料から、現在のサワガニ集団の特異的な遺伝構造が形成されるに至った過程を考察することが出来た。
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