研究課題/領域番号 |
09839027
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
青塚 正志 東京都立大学, 理学研究科・生物科学専攻, 助教授 (40106604)
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研究分担者 |
田村 浩一郎 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00254144)
鈴木 惟司 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (40128575)
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キーワード | サワガニ / ミトコンドリアDNA / アイソザイム変異 / 交雑域 |
研究概要 |
神奈川県とその近郊では、体色の異なるサワガニ集団(DA:黒褐色型とBL:青色型)が狭い混生域を境に側所的に分布している。Aotsuka et al.(1995)はアイソザイム分析によって両体色集団間に著しい遺伝的分化が生じていることを報告した。しかし、少ない遺伝子座数による分析に止まっており再検討が必要と思われる。本研究では、mtDNA ND2領域の塩基配列とAmy遺伝子座の変異を指標に南関東に生息する体色集団の遺伝的変異性および体色集団間の遺伝的分化、さらに、混生域での遺伝的構成を調査した。BL集団4地点、DA集団7地点混生域1地点から採集した合計70個体についてND2領域427bpの塩基配列を決定した。その結果、塩基配列の異なる14のハブロタイプが識別された。これらのハプロタイプは遺伝子系統樹上で明瞭な2つのクラスターを構成した。それぞれのクラスターとそれを構成する個体の体色には完全な関連が認められ、体色集団間に大きな遺伝的分化が生じているというアイソザイム分折結果を支持した。 神奈川県日向川では神奈川の他の河川と同様に、上流にDA、下流にBLが分布しており、両者の混生域は約1kmの幅のごく狭い地域に限定されている。これまでのアイソザイム分折結果の詳細な検討から体色個体間に交雑が生じていることが確認されているが、異なる体色個体間で任意交配が成立していないことを示唆する結果も得られている。本研究では混生域から、合計98個体について、mtDNAハプロタイプ、Amyアイソザイム遺伝子型、体色型を分析し、体色の異なる個体間の生殖的隔離機構の有無についてさらに詳細な検討を行った。その結果mtDNAハプロタイプとAmy遺伝子型は必ずしもランダムに組み合わさっていないことが判明した。この結果は、遺伝的に異なる体色集団の混生域では、両者が出会って間もないために遺伝的に未だ融合していないか、初期的な生殖的隔離機構が成立していることを示唆する。
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