サーモプラズマの細胞骨格様構造の生化学的分析を行った。サーモプラズマの菌体を培養し集菌、洗浄の後、非イオン性活性剤Triton X-100を用いて処理することにより、細胞骨格様の不溶性画分を得ることができた。これを可溶化した後に、陰イオン交換カラム、ゲル濾過カラムを用いて部分精製を行った。その中から、温度pH等などの条件を変化させることで、解離、凝集するタンパク質を含む分画をいくつか得ることができた。その構造を電子顕微鏡で観察したところ、細いチューブ状の構造および網目状の構造をとる画分が見られた。こうした画分をSDSポリアクリルアミド電気泳動によって分析し、構成するタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列を決定した。 サーモプラズマの菌体にC14でラジオアイソトープ標識したメバロン酸を取り込ませた後に膜脂質を抽出し、様々な極性基の種類を持つジエーテル脂質とテトラエーテル脂質を二次元の薄層クロマトグラフィーによって分離した。取り込み時間によっていくつかのスポットがオートラジオグラフィーによって見いだされた。これらのスポットの構造を推定した。長時間の取り込み反応を行うとサーモプラズマの主要極性脂質、すなわちリン酸グリセロールと糖を結合したテトラエーテル脂質が蓄積した。テトラエーテル脂質合成阻害剤(タービネフィン)を添加すると主要極性脂質合成は阻害され代わりにジエーテルが蓄積した。阻害剤の存在下で蓄積する脂質、及び、阻害解除後に合成される脂質を分析することから、テトラエーテル脂質合成経路を推定することができた。
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