オオサンショウウオ科2属3種(オオサンショウウオ、Andrias Japonicus:4頭、チュウゴクオオサンショウウオ、A.davidianus:2頭、アメリカオオサンショウウオ、Cryptobranchus alleganiensis:1頭)の5S rDNA(約440bp)を各個体ごとにPCR法にて増幅、クローニングし、塩基配列を求めた。5S rDNAは、よく保存されている遺伝子領域と、種によって長さや塩基配列が大きく異なるスペーサー領域から成る。3種からの23配列の5S rDNAを用いた比較解析を行ったところ、種内変異率より種間変異率の方が高く、3種の分化が起こっていることが示唆された。また、Andrias属内の2種間に比べ、2属間の変異率は、両領域共に、非常に高い値を示した。さらに、C.alleganiensis固有の固定は7塩基存在する。また、A.Japonicusの遺伝子領域内において1塩基の固定が確認された。A.Japonicusは4地域よりの各一個体から得られた全ての配列に共通した変異であることから、A.Japonicus固有の変異である事が示唆された。また、他の2種におけるこの塩基は、種間で共通しており、A.davidianusの個体間でも変異は見られなかった。塩基配列による、Andrias属2種間の明確な差が確認されたのは本研究が初の報告となる。さらに、他の両生類7種の既知の5S rDNA遺伝子領域を用いた系統解析では、オオサンショウウオ科は無尾目と分岐し、比較的近い有尾目と同じクレードを構成した。これらの結果は、従来の形態学的な分類を支持するものである。 一方、今回の研究では、A.Japonicusの地域差は遺伝子領域、非転写スペーサー領域共に認められなかった。また、A.davidianusの個体間の差も存在しなかった。
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