研究概要 |
オオサンショウウオ科2属3種(オオサンショウウオ、Andrias Japonicusチュウゴクオオサンショウウオ、A.davidianus、アメリカオオサンショウウオ、Cryptobranchus allegantensts)のゲノムDNAの高頻度反復配列(1987年度)と5SrDNA(1988年度)における塩基配列の変異を指標として系統関係を類推した。高頻度反復配列においては、8個体(AJ:5、Ad:2、Ca:1)の抽出DNAを多数の制限酵素で切断し、特徴のある断片をプローブとしてサザンブロットハイブリダイゼーションを行った。断片がそれぞれの種に存在するか否かを調べ検討したところ、A.japonicusとA.davidianusがより近縁であることが判明した。3種に共通して存在するHindIII断片の塩基配列を比較したが、系統関係を示す有効なデータは得られなかった。5SrDNAについては、7個体(Aj:4,Ad:2,Ca:1)からの23配列を用いた比較解析を行ったところ、3種の分化が起こっていることが示唆された。また、属間の変異率が属内の2種間に比べ、非常に高い値を示した。さらに、C.alleganiensis固有の固定は7塩基存在し、A.japonicusの遺伝子領域内において1塩基の固定が確認された。A.japonicusは4地城よりの各個体から得られた全ての配列に共通した変異であることから、固有の変異である事が示唆され、他の2種におけるこの塩基は、種間で共通しており、A.davidianusの個体間でも変異は見られなかった。他の両生類7種の既知の5SrDNA遺伝子領域を用いた系統解析では、オオサンショウウオ科は無尾目と分岐し、比較的近い有尾目と同じクレードを構成した。これらの結果は、従来の形態学的な分類を支持するものである。 一方、今回の研究では、A.japonicusの地域差は認められなかった。また、A.davidianusの個体間の差も存在しなかった。
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