研究概要 |
後期中生代,より具体的には白亜紀の環境変動を解明するために,北海道天塩中川地方の白亜系蝦夷累層群の地質調査を行い,これまでの地質情報の蓄積を更新する成果を得た.最も成果が得られたのは下部蝦夷層群及び空知層群についてであり,極めて連続的な良いセクションの岩相変化を観察記録することが出来た.併せて,化石試料及び分析試料を採集した.化石試料は,このセクションでは殆ど微化石に限られるため,当該専門研究者にその抽出・同定を依頼している.分析試料については,各種の有機地球化学的分析を石油公団において行うことが出来た.また,安定炭素同位体比分析は帝国石油株式会社において行うことが出来た.これらの化学分析の結果,天塩地方では,OAE1の影響は認められるものの,大夕張地方のように4回(OAE1a〜1d)の小事変が識別できないことがほぼ明らかとなった. 天塩地方について今後の課題は,さらに化学分析,特に安定炭素同位体比分析用の試料をより層序学的分解能を高めて得ることである.それにより,大夕張地方で識別される4回の小事変のうち,真に1回しか生じなかったのか,それとも存続時間等の規模が小さかったのか,確定できよう. 既に過年度において基本的な調査・分析の終わっている大夕張地方のCenomanian/Turonian境界のOAE2については,化学分析の結果を多変量解析の手法で検討することにより,海洋無酸素事変の期間は,泥岩の元素組成においてもその上下の地層群とは異なることが明確となった.
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