研究概要 |
日本・ロシアシベリア・ネパール・台湾の各地で採集されている小哺乳類(食虫類・翼手類・齧歯類)を材料にして,「ヒマラヤ回廊」に由来すると思われるものの進化学的解析をおこなった.これらの研究から得られた新たな知見は以下の通りである. 1.分子系統:チトクロームbの塩基解析によって日本産ヒナコウモ科のMyotyis,Pipistrellus,Eptesicus,Nyctalus,Vespertilio,Barbastella,Plecotus,Miniopterus9属の種について分子系統を明らかにした(原田・鈴木,,1997). 2.染色体:ハタネズミ雄の減数分裂の際の性染色体対合様式から,Micotus montebelliが古生物学的にいわれていたようなM.alvalisに由来するものではなく、M.oeconomusに由来することを明らかにし,これらが他のユーラシア産Micotus属から分離されるべきであることを示した(Borodin et al.,1997).台湾産のCrocidura attenuataの核型を初めて明らかにした(Motokawa et al.,1997). 3.形態:日本産および大陸産Microtus属の頭骨の形態比較をおこない,Microtus montebelliとM.alvalisの形態的類似が大臼歯の収斂進化の結果であることを支持する結果を得た(目加田ほか,1997).ネパール・東南アジア・台湾に産する(あるいは由来する)Suncu smurinus,Crocidura hilliana,Chodsigoa sodalisついて形態学的解析をおこなった(Aolad et al.,1997;本川・原田,1997;Motokawa et al.,1997). 4.寄生虫:ネパール産Adodemus gurkhaおよびMicrotus sikimensisの寄生虫相をあきらかにして大陸と日本に産する寄生虫相との比較検討をおこなった(Asakawa et al.,1997).またヒマラヤ回廊上に生息する小哺乳類の寄生虫相の解析をおこなった(浅川ほか,1997;浅川,1998;Kifune et al.,1997a;Kifune et al.,1997b).
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