研究概要 |
日本・ロシアシベリア・ネパール・台湾の各地で採集されている小哺乳類を材料にして,「ヒマラヤ回廊」に由来すると思われるものの進化学的解析をおこなった.これらの研究から得られた新たな知見は以下の通りである. 1. 染色体:岩手県産ミズラモグラの各種分染法による核型の検討(川田ほか,1998)により,染色体数2n=36を追認したほか不明だった性染色体構成を明らかにした.またヒミズとの染色体数の差がロバートソン型変異によって説明できることを発見した.台湾産キクチハタネズミの染色体のG-バンドパターンの分析とXY染色体の減数分裂時における対合状態を日本産ハタネズミと比較してシナプトネマ構造の形成を確認し,ヒマラヤ回廊上のハタネズミ属の類縁関係を考察した(目加田ほか,1998a;1998b).台湾産ケムリトガリネズミ属(Soriculus)2種の核型の相違を明らかにした(Motokawa et al.,1998). 2. 形態:日本産トガリネズミ科の種に関する分類・形態・分布などの総説を発表して,その起源に関する考察をおこなった(子安,1998).台湾産タカサゴモグラの形態的特徴を示して「ヒマラヤ回廊」の意義について発表した(子安はか,1998).愛知県山間部におけるニホンイタチの形態的特徴を明らかにした(太田はか,1998). 3. スクラーゼ活性:スクラーゼ活性の有無が進化史の上でどのような意義があるかを明らかにした(織田ほか,1998). 4. 生物地理:「ヒマラヤ回廊」に由来するとおもわれるミズラモグラの石川県における分布を明らかにした(林・子安,1998).
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