研究概要 |
日本・ロシア・韓国・ネパールの各地で採集されている小哺乳類を材料にして,「ヒマラヤ回廊」に由来すると思われるものの進化学的解析をおこなった.これらの研究から得られた主要な知見は以下の通りである. 1.染色体:日本と日本周辺に生息するニホンモグラ属Mogeraの染色体分染法による解析から,ミズラモグラ・コウベモグラ・サドモグラの系銃関係を明らかにし,さらに韓国産Mogeraの系統的位置を考察した(川田ほか,1999).台湾産キクチハタネズミとネパール産シッキムハタネズミの染色体核型を示し,両者がともに精子形成の際に染色体対合を行うことから、日本産ハタネズミと台湾産キクチハタネズミがともにヒマラヤ回廊に由来する可能性を議論した. 2.形態:日本各地に生息するニホンイタチとチョウセンイタチの個体群に由来する標本を用いて頭骨の計測学的研究を行い,両種の形態学的な特徴を明らかにした.歯と骨格の形態学的特徴から,日本産ヒメヒミズ・ヒミズ・ミズラモグラ・センカクモグラ・トガリネズミ類の系統関係を示し,その由来を論議した(子安,1999). 3.寄生虫:日本国内の陸上哺乳類に寄生する寄生虫相のリストを作成し(長谷川・浅川,1999),ヒマラヤ回廊に関する寄生虫の移動経路を推定するための基礎資料とした.
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