P117プロセスト遺伝子は霊長類の一部に見いだされたレトロポゾンである。本来の機能している遺伝子の塩基配列決定を行った。ヒトとカニクイザルの本来の遺伝子とプロセスト遺伝子、およびDNAデータベースのホモロジー検索で見いだしたマウスの_CDNA配列との比較を行った。イントロン3つを含む遺伝子であった。ヒトの^<52>Metがカニクイザルでは^<52>Valであった。ヒトに対するカニクイザルのプロセスト遺伝子の非同義置換速度は本来の遺伝子の値に近くプロセスト化されてからも変異の蓄積が少なかった。本来P117遺伝子の存在が確認できたので、DNA配列からの推定されたアミノ酸配列のうちヒトとカニクイザルで共通で、しかも親水性のアミノ酸を多く含むペプチド(25〜31番目)を化学合成した。そのペプチドとホモロジーを有するタンパク質は見いだされていない。ペフチドに対するポリクロナル抗体をウサギで作成した。(サワディーテクノロジー社に依頼)。以前に行ったノーザンハイブリダイゼーションの結果から腎臓はP117の発現量が多かったのでアフリカミドリザルの腎臓由来細胞株COS-1に対して免疫組織化学的に存在部位を検討した。核に隣接した小胞体と思われる部位に強い発現が認められた。ヒト上科にはプロセストP117は挿入されていなかった。新世界ザル4種のプロセストP117の全塩基配列を決定した。12塩基と1塩基の欠失および終止コドンへの変化が認められた。新世界ザルの機能P117遺伝子の配列はまだ決めていないが、ヒトに対する同義置換数と非同義置換数とを考慮すると新世界ザルが分岐する頃にプロセスト遺伝子として挿入されていたのではないかと推定された。
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