研究概要 |
珪質堆積岩のうち,層状チャートについてはジュラ紀付加体の美濃帯と白亜紀付加体の四万十帯で調査および試料採集を行ない,比較研究用試料を秩父帯で収集した.第三紀の硬質頁岩またはポーセラナイトと珪藻土については,日本海側の能登半島および壱岐で調査採集を行なった.試料の研磨薄片とフッ酸腐食片を作成して,偏光顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果,古期のものが放散虫骨格を主とするのに対して新期のものは珪藻殻を主としており,これまでの成果とあわせて例外のないことが確認された.このように地質時代に対応して珪質生物遺骸内容が異なっていることは,珪質生物の変遷史に海洋のシリカ収支が関連してきたことを強く示唆している.海洋表面の透光帯で生産される珪藻は放散虫とは生態が異なるので,海洋におけるシリカの垂直的分布もまた珪質生物の変遷にともなって変動したことが予想される.古海洋環境や古地理の復元に資するために,データはデジタル情報として整理されて記録保存されつつある.一方,ネットワークを通して珪質堆積岩のデータベースを公開するために,今年度は既存の地質科学関連のデータベース,とくに放散虫化石など微化石のデータベースについて調査を行なった.同時に本研究の結果の利用に関連して,自然史系博物館における地質科学関連資料のデータベースの構築と公開についてまとめ,質の高いコンテンツが重要であることは当然のことであるが,現状における問題点を指摘しつつ,将来どのようにあるべきかについても検討した.
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