研究概要 |
地質調査は日本海側の地層群を中心に行なわれ,珪質堆積岩としてチャートがおもに収集されたが,新生代の地層では硬質頁岩と珪藻土が採集された.調査の過程において,熱水による変質作用で形成されたシリカ沈澱物から,2種の新鉱物が発見されている.調査研究で得られた情報を比較研究に活用していくために,標本資料のデータベース構築について,博物館の蓄積資料とあわせて検討を行なった. 収集資料については,通常の偏光顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察から,珪質堆積岩の主体をなすシリカが,放散虫や珪藻といった珪質生物遺骸であることが確認され,混在する他の構成物質については鉱物内容が分析され,おもにイライトやクロライトからなることが確かめられた.また,熱水性シリ力沈澱物にふくまれる燐酸塩鉱物などが識別されたが,ボロンの珪酸塩鉱物Okayarmaliteや砒素と鉛の硫化物tsugaruiteといった新鉱物が発見され記載された.このような生物源および無機化学的沈澱による構成物質から,冷水塊における珪藻の高い生産量や熱帯水域での放散虫のブルーミングに関連して形質堆積岩の堆積条件を考察し,くわえて熱水作用が示唆する海洋底環境についても推定し,古海洋環境解析の基礎データとした. 形質堆積岩,形質微化石,および関連する鉱物の資料は,博物館においては整理・標本化されて,附随する情報とともに登録保管されて,利用に供される.そのためデータベースの活用方式について検討し,鉱物資料の一部については博物館のホームページで公開を試みた.
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