研究概要 |
ミドリイシ属サンゴの交配実験の結果、今年度は新たにA.asperaが2種の隠蔽種からなること、そのうちの1種がA.digitiferaと交雑すること、もういっぽうがA.pulchlaと交雑することを明らかにした。遺伝子系統解析ではそれら交雑する種の間で遺伝子プールが共有されていることが示唆された。また新たに2種(A.humilis,A.gemmifera)が、A.florida-A.nobilisの遺伝的グループに属することが分かり、それらとの交雑の可能性が示唆された。さらに一斉産卵より約1時問および2時間早くに産卵を行うミドリイシ属の種をそれぞれ2種と3種確認し、それぞれが交雑と遺伝子プールの共有によるグループを形成することを明らかにした。また一斉産卵する種から系統的に有意に離れていることが明らかになった。これらのことから、産卵時間をシフトするような変異を生じた一群の個体の出現によって同所的種分化が可能ではないか、との仮説が導かれた。いっぽう遺伝子系統解析にあたっては、これまで用いてきたミニコラゲン遺伝子に加えて、多重遺伝子族のヒストンとリボソーム遺伝子の介在領域を解析に加えた。それら多重遺伝子族に基づく系統解析の結果は、ミニコラゲン遺伝子に基づく遺伝的系統関係を支持した。このことによって遺伝的系統関係の推定結果に、より高い信頼性が得られた。また多重遺伝子の各コピー間で配列に違いが見出されたことから、各グループの種は、共通祖先から種分化して間もない可能性よりも、雑種化によって遺伝子移入を起こしている可能性の方が高いことが示唆された。
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