本研究目的は、環境問題と情報問題という、現代において人間と社会に対して、最も大きな影響を与えているアクチュアルな二つの問題の深い内的連関を把握できるような理念・パラダイムを探究し、現代における人間・社会観の深化をはかりつつ、新たな学問分野<共生学>を切り開く端緒をつかむことであった。最終年である本年、平成11年度は、これまでの成果の集大成を目指して、平成10年度に続いてそれぞれの問題の原理的究明をより深く多面的に行い、内的連関を解明すると共に、これを著書等を通じて具体的に表すことに集中した。 11年度前半には、「環境問題と生活世界の危機」という論文を著して、環境・生命問題と情報・コミュニケーション問題の内的連関を究明し、社会理論的な統合的理解がはかれるような「生活世界」概念の批判的改変を試み、歴史的発展の視点から現代社会の構造的理解のための諸カテゴリーを考察した。また、11年度後半には、3年間の成果を著書として取りまとめるべく集中し、現時点でその草稿を書き上げた段階にあり、遅くない時期に青木書店より出版する予定である。著書の書名は『情報化と環境化の中の人間・社会観--共生学の構築をめざして』(仮称)であり、ちなみに編別構成は「第I部 情報化と環境化の中の人間存在」、「第II部 環境と共生の人間論」、「環境と共生の社会理論」である。 なおまた、現在平行して、関連論文として、岩波書店のシリーズ『20世紀の定義』の中の「環境と成長の限界」及び雑誌『教育と人間』の「環境と人間」を執筆中である。
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