本年度は、まずは一昨年来入手したヨーロッパ近代機構関係の一次資科のマイクロフィルムをプリントし、読解を進めたが、研究の中心は、近代的機構の明治期におけるわが国への導入に際して、わが国の特異な傾きを生じさせるものの究明に置いた。そこでわたしが新たに発見したことは、ヨーロッパ近代の核心をなす、ラ・メトリのテキストからひき出すことができ、またラ・サールのテキストにおいても確認できる〈従順=有能〉図式に対して、わが国には〈従順=幸福〉図式と呼ぶべきものがあり、それが、わが国の律令制度形成期である、『後日本紀』の天平九年の条に、出羽国守田辺史難波の説として、初見するということである。この発見については目下執筆中の著書において論じている。 また、鹿児島ラ・サール校に取材に行き、J.B.ド・ラサールの思想であった、神の監視するまなざしによる個人化という方式が、同校においては、教師-生徒間の一対一の関係という思想に変形されて、継続されているということを新たに発見することができた。 また、わが国における近代的機構の導入の研究において、そして同時に近代的教育思想の克服を考えるために不可欠の資料である、J.B.ド・ラサール『キリスト教学校の運営』の、原典版テキストを、TeX-textに直し、それを私のインターネット・ホームページにおいて公開することによって、研究利用者の便宜を高める努力を継続中である。(www2.biglobe.ne.jp/〜naxos/modernite/eLaSalle.htm、参照)。
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