研究概要 |
本年度は、研究者(鶴岡)が工学院大学から東京大学大学院に所属を転じ、それにともなう諸般の環境変化のため、研究遂行にいささかの予定変更を余儀なくされた。(準備中の近世初頭西欧における神秘神学概念の成立及びその現代的神秘主義概念との連続性に関する論文執筆が遂行できなかった、等。)しかし研究自体は、東京大学における講義や演習を新たな検討の場所として推進・深化することができ、講義ノート等の蓄積は、今後の研究成果発表の素材として活用しうる。 (1) 研究資料としての文献収集は予定通り進展し(研究費の大半はそのために使用された)、資料の移転や整理のため若干の研究補助も依頼した。 (2) 近代日本における神秘主義思想の移入に関しては、知見および展望にかなりの進展があった。 (3) 西欧神秘思想史については、とくに古代から中世、また今世紀の研究史に関して、研究が進展した。 なお、16世紀スペインの大学者Luis de Leonの神秘主義的聖書(雅歌)解釈に関する研究発表(日本宗教学会)、およびキリスト教における「神秘的ヴィジョン」に関する研究発表^<(*)>(英文;Workshop:Mystical Visin of God in the Three Abrahamic Religions. Oct.3.1998)を行った。これらは本萌芽的研究のテーマを正面から扱ったものではないが、その視点および内容には本研究の成果が少なからず反映されている。 (4) 神秘主義研究史のビブリオ作成は、着手したものの未完であり、次年度も継続する予定 (5) 神秘主義概念の学問的意義に関する考察は、その中心的部分については大凡の見通しが固まり、次年度の論文化に向けてほぼ準備が整いつつある。 ^<(*)>Mystical Vision of God in Christianity:Description, Interpretation and Evaluation of Myscial Experience by Christian Mystics
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