口唇口蓋裂のセルフヘルプグループには教育と医療の領域との2種類、存在する。圧倒的に医療の領域が多いが、本年の研究では両者における親の会の違いを会の目標や理念、口唇口蓋裂に対する捉え方、援助特性について明確にした。 さらにセルフヘルプグループの原初的形態として、戦前から存在する病者の患者運動と知的障害児の親の会とを取り上げて検討した。セルフヘルプグループの典型として一般的にアルコール依存症者のAlcoholics Anonymousが挙げられることが多く、広く一般市民にセルフヘルプグループに対する誤解を生む危険性があるために、古典的なセルフヘルプグループを明確にした。1990年代になって、極めて活発に創出され始めたライフスタイルの変遷に伴うグループや価値観の転換を求めるグループなど、多様にある。中でも容貌の異形の人々のセルフヘルプグループはアメリカとカナダを中心にイギリスやオーストラリアなどと交流している。容貌の異形の原因は問わないため、このセルフヘルプグループには多様な病気や障害の人々が加入している。違った病気ではあっても共通の問題を持ちつつ、生きる人々が同じセルフヘルプグループの中で、支え合い、社会に理解を求めていく。かつて同じ病気の人々の集まりであった患者会が、異なる病気ではあっても問題が共通であることを理由にあらゆる病気のグループが連携して日本患者・家族連合会JPCを創設して、世界の患者会と交流した経緯と同じである。 本年の研究によって、このように一見、異なるように見えるセルフヘルプグループが基本的に同じ経緯を辿り、共通した援助特性や運動の理念を有していることにセルフヘルプグループの普遍性を見いだし得た意義は大きい。
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